コラム

COLUMN

リトアニアの琥珀

2020.11.9  コラム 

琥珀の念珠

井筒法衣店社長 今岡規代

琥珀とは

琥珀は、はるか数千万年も前に木からこぼれた樹液が化石になったものです。バルト海沿岸がその主な産地で、世界産出量の八割を占めるといいます。琥珀は古くから人々に愛され、ローマ時代にはすでにバルト海と北イタリア結ぶ「琥珀街道」と呼ばれる道路があったそうです。

琥珀は約200℃~350℃で溶解し加工が比較的容易なために、「琥珀」として販売されているものは、加工の全く無いものから再生品まで品質はさまざまだといいます。私は、井筒法衣店の念珠に使うため、加工の施されていない琥珀を求めて、2017年にリトアニアのパランガという港町に調査に行きました。この町は、かつては琥珀街道が通ったところで、いまも琥珀の取引が広く行われています。琥珀博物館もあります。

リトアニアのパランガ

バルト海沿岸

この町には、琥珀を取り扱う店が多数あります。
私は、いくつもの店で、様々な種類の琥珀を目にし、説明を受けました。日本で琥珀といえば、「はちみつ色の透明な宝石」というイメージですが、じつは、乳白色や茶色の透明でない琥珀があり、特に乳白色の美しいものはヨーロッパでロイヤルアンバーと呼ばれ貴重とされていることを知りました。
また、小さな粒の琥珀をいくつも溶かして大きくして固めたものや、硬化状態が足りない「コーパル」と呼ばれる類似品を琥珀と称したもの、「樹液に捕まった虫」を演出するために溶かした琥珀に現代の虫の死骸を混ぜた偽物なども出回っていることなども知りました。
私は、できるだけ加工されていない、そして美しい琥珀、また信頼のおける店を探しました。

パランガ海岸の琥珀

海岸で拾った琥珀

この地方では、琥珀は海底から採取します。人類が誕生するはるか前に、倒木が地中に埋もれ、その樹液が地面の水分や熱や圧力などで変性して化石となり、バルト海の海底に眠っています。パランガの海岸に出てみると、貝殻や海藻、小石や砂に混じって、不ぞろいな形をした小さくて商品にならないような琥珀が打ち上げられており、子供たちが拾っていました。私も琥珀を集めてみました。数千万年の時を経て、いま、初めて私と巡り合ったのです。海岸で拾った琥珀を手のひらに握りしめたら、凝縮した時間を手にしているようでした。

リトアニアで私たちが選んだ琥珀は、弊社の職人がひとつひとつ丁寧に念珠に仕上げています。
ぜひ、手に取ってみてください。