コラム

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衣替えのこと

2020.11.24  コラム 

御法衣

画と文 ㈱井筒東京 常務取締役 井筒周

日本の四季と衣替えの歴史

日本には四季があり、夏と冬では着る服に違いがでるのは自然なことです。平安時代には旧暦の4月1日から夏服を着て、10月1日には冬服に着替えることが定まっていました。

江戸時代には、武家では衣替えが年に4回になっていました。

明治時代では、役人、軍人、警察官の制服を定め、明治6年(1873年)に、新暦(太陽暦)の6月1日から9月30日までの4か月間は夏服を、それ以外の8か月間は冬服を着用することを決めました。これが、学校や民間企業にも伝わり、制服の衣替えの基準となりました。

1979年に大平内閣が提唱した「省エネ・ルック」は不評でしたが、2005年に今度は「クールビズ」を政府が呼びかけ、広がりを見せました。環境省では6月1日から9月30日をクールビスの実施期間と想定していますが、これは明治政府が定めた夏服の期間と同じですね。

アメリカではかつて、「白い服や白い靴を着用するのは、メモリアルデー(5月の最終月曜日)からレイバーデー(9月の第一月曜日)のあいだに限る」というルールがありましたが、いまや、そんなルールにしばられる人はほとんどいません。

現代の気候にふさわしい身なりを

省エネルック絵

気象庁によりますと、日本の平均気温は観測が始まった1898年(明治31年)から100年で約1.2℃上昇しており、特に1990年以降、熱帯夜(最低気温が25℃以上の夜)や猛暑日(最高気温が35℃以上の日)が増えて、冬日(最低気温が0℃未満の日)が少なくなっているそうです。今では、5月や10月に冬服では、少し暑く感じる人も多いでしょう。旧暦の4月は新暦の5月、旧暦の10月は新暦の11月にあたります。最近の日本の気候を考えると、又、太陽の動きからも、立夏(5月初め)頃から立冬(11月初め)頃までが夏と考えるのが順当と感じます。

「冬服こそが正式であって、夏服は一時しのぎの略式」と考えるのではなく、暑い夏には、夏の式正の服装があると考えて、現代の気候にふさわしい身なりを整えるのがより文化的なような気がします。

省エネルック絵