画と文 ㈱井筒東京 常務取締役 井筒周
各国の獅子
一対の獅子と狛犬が神社や寺院の入り口や拝殿・本堂の脇におかれているのをよく見ますが、百獣の王ライオンを守護獣とする風習は古くはエジプト、ギリシア、西アジアに見られ、人面を持つライオンのスフィンクスや、ライオンの頭を持つ人体像があります。また、インドでは仏の台座にライオンを配したり、釈迦の遺骨を納めるストゥーパの紋にもライオンを見ることができます。中国では、仏教伝来のころより仏像の左右に獅子を配したものが多数あります。
日本の獅子
日本では7世紀ころから一対の獅子の姿が見られるようになります。獅子と狛犬の一対が成立するのは平安時代の9世紀ころと推測されており、紫宸殿の賢聖障子には獅子・狛犬の姿があります。この図柄では、獅子が口を開き、狛犬は口を閉じて頭上に角があります。また、たてがみや尾は獅子が直毛、狛犬は巻き毛となっており、これが典型的な獅子・狛犬の姿といえます。
平安時代後期からは、獅子と狛犬が体を向かい合わせながら、首をひねって顔を正面に向けるという、日本独自のスタイルが広まっていきました。また、近世以降は獅子と狛犬を区別せずに狛犬と総称するようになりました。